修了作品

東京国立博物館蔵
「木造菩薩立像(列品番号C-20)模刻制作」

<研究概要>
 本研究は、鎌倉時代の作である東京国立博物館蔵・木造菩薩立像(列品番号C−20)を模刻することにより、同時代の造像技法を学びつつ実作者の観点からその表現手法について理解を深めることを目的とする。
<本像について>
 本像は像高が100cm強、いわゆる三尺の菩薩形立像である。腰を捻り、右足を一歩踏み出して軽快な歩行の様子を表現している。こうした形姿の像は鎌倉時代の独尊の菩薩像、特に奈良地方に遺る作例に多くみられる。宝冠の中央に空間をとり、ここに標幟を付けていたと考えられるが、それが水瓶であったなら弥勒であり、また阿弥陀化仏であったなら観音像ということになる。尊容の類似する東大寺中性院像や快円作・興福寺本坊持仏堂像が弥勒菩薩像であるのと同様、本像も弥勒像として造られた可能性が高い。本像の伝来についてはほとんど判明していないが、臂の外側にいったん垂下する天衣の扱いは奈良国立博物館の善円作・十一面観音像などと共通する特色を見せ、小ぶりな口元などにも善派に近い趣があるところからみて、作者は善円(1197-?)もしくはその周辺の仏師の作と思われる。また本像の大きな特徴のひとつが唇に朱の伏せ彩色をした上で水晶板を嵌める玉唇ともいうべき技法で、同時期の類例では他に不動明王像の歯(和歌山・金剛峯寺)、弘法大師像の爪(神奈川・青蓮寺)などがあり、やや下った時代では歯吹阿弥陀などの例がある。本像では唇のつややかさを表現する効果をあげており、当時隆盛した生身の仏に対する信仰に応えるような、現実感のある仏の姿が表されている。