Online Lecture
『 仏像の彫り方 』
担当講師
村上 清
ここでは、仏像の素材や彫り方造り方について、Q&A形式でお答えしていきます。素朴な疑問、質問をこちらからどしどしお寄せください。
Q.10 「一木造り」と「寄木造り」はどこが違うのですか?
A.10

とても興味深い質問ですね。
これは当研究室の学生の重要な課題の一つにもなっています。このふたつの仏像キーワードは、ほとんどの日本国民が一度は耳にした事があるのではないでしょうか。しかし、その正確な意味をきちんと理解している人は、ほんの一握りだといっても過言ではありません。なぜならば、これらは専門的な要素を含んでおり、真に理解するためには、実践的な経験が必要になるからです。
ふたつの技法の違いを考えるときには、歴史に沿った技法の変遷と、それぞれの目的に注目すると良いでしょう。古く仏教伝来飛鳥時代から平安時代の中頃まで、仏像を造立することは、いわば国家事業といえるほどの大きな出来事だったのです。大陸から伝わる異国の進んだ文化を目の当たりにして、まさに驚きの連続だったに違いありません。時代が下り、平安時代後期には日本独自の文化を熟成させます。藤原時代と呼ばれる貴族が活躍した時代です。その後、時代の中心は武士にとって代わり、仏像の需要がより多くなっていったのです。そこでその要望に応えるべく世紀の大発明“寄木造り”が考案されたわけです。“一木造り”から“寄木造り”へ、造像技法は時代の流れと密接に関係していたのです。
だからといって難しく考えることはありません。広義に“一木造り”とは、一本の木から彫り出す技法で、“寄木造り”は数本の木材を寄せ合わせて彫る技法を指しています。美術史的に解説すると、“一木造り”は、像の主要頭体幹部材を一本の木から彫出する技法を指し、“寄木造り”は、像の主要頭体幹部材を二材以上の木を矧ぎ寄せて造る技法を指すことになります。ただし、そこには根本的な極めて大きな違いがあることを忘れてはなりません。
これを一言で説明するならば、“一木造り”は、木表面側からのアプローチのみによって彫り進める技法で、これは木に対する信仰や祈りの気持ちを重んじた原始的思想がもとになっているといえます。そして“寄木造り”は、材の矧ぎ付け面を活用し、像内側からのアプローチによって彫ることができる技法だといえます。まさに合理的かつ統一的大量生産に適し、分業にも対応する画期的な技法であることがわかります。
 
ここから先の詳細は直接ご説明しますので、是非是非当研究室までいらしてください。強く興味を持たれたならば、当研究室を受験なさることをお勧めいたします!