Online Lecture 3

「3Dレーザースキャニングによる彫刻文化財の調査の概要」
○調査目的

東京芸術大学大学院美術研究科 文化財保存学保存修復彫刻研究室では、3Dレーザースキャニングによる彫刻文化財の3D計測を行い、現在までに「平等院鳳凰堂(国宝)阿弥陀如来坐像」「浄瑠璃寺 (国宝)九体阿弥陀像」、「興福寺(国宝)龍灯鬼」、「芸大美術館所蔵 快慶作大日如来坐像」を含む30体以上の計測を実施しています。

多くの彫刻文化財の現状を誤差1ミリ以下の精度で3次元的にデジタル計測することは、文化財保護の観点から見て有効なデータ保存となるばかりでなく、造立当初の状態を復原する際の基礎資料となり、また保存修復の現場で必要とされる造像技法の解明や教育研究(人材育成)への応用にもきわめて有効な手段であるため、(株)キャドセンターデジタルアーカイブ・ラボの協力を得て実施し、今後この計測事業を拡大していく事を考えています。

形状検査ソフトウェア
POLYWORKS/MODELERによるデジタル化
CYCLON-SUEVEY によるレタリング化


 ○3D調査により期待される成果

現在、当研究室では平安後期(定朝様式)から鎌倉期(特に慶派)の彫刻文化財を中心に計測を行っています。この計測した3Dデータを比較検討することにより、目視による調査研究だけでは限界があった地域や時代特性を解析し、作家や工房、制作年代を特定する研究にも大いに寄与する可能性が期待できます。
特に、造立年代が未解明の像については、各部のバランスや仮想断面、寄木造りの特徴などを、基準作例となる所蔵と比較することにより、新しい知見が得られる可能性が大いに期待されます。図1
また本研究によって得られたデジタルデータは、各部位の詳細な計測数値のほか、任意の仮想断面を抽出して、像の大小にかかわらず同じスケールモデルとして形状や比率をたちどころに比較検討できる利点があります。このことによって、単に美術史研究者の利用のみならず、彫刻文化財の現状保存と当研究室が進める彫刻文化財の保存修復技術者の育成に際しての応用など、その有効活用の可能性は限りありません。(写真1図2

(図1)
       大きさの違う各像のスケールを同値にし、正中断面の比較


写真1)
   茨城県大楽寺阿弥陀如来坐像            茨城県西念寺阿弥陀如来坐像
(図2)
                 茨城県同時代の正中断面比較

○機材の特徴

1. 今回採用する計測システムは、極めて微量な赤外線を照射し、その反射光によって3次元計測を行うもので、非接触での作業であり、現在行われている他の文化財調査に比べて対象物件に対する安全性がもっとも高い方法といえます。

2. 機材は約15キログラムと持ち運びが簡便で、三脚上に固定することにより自在な機動性を持ち、あらゆる場所での計測が短時間でおこなうことが可能です。(写真2・3

3.測量により得られたデジタルデータは、各部位の詳細な計測数値のほか、任意の仮想断面を抽出して、像の大小にかかわらず同じスケールモデルとして形状や比率をたちどころに比較検討できる利点があります。

4.今回使用するレーザースキャンVIVID900はtele、middle、wideの三種類のレンズがあり、それぞれに計測範囲、精度を考慮し組み合わせて使用することで、より高精度な三次元データの取得が可能になります。またその画像にテクスチャデータを貼り付けることによって、よりリアルな表現が可能となります。木寄せた部材が外れているような場合、各部材データを再構築し元の姿に再現することも可能です。(図3

写真2 写真3
東京藝術大学大学美術館にて
快慶作大日如来坐像の撮影
浄瑠璃寺
国宝九体阿弥陀像撮影風景

図3
茨城県 来迎院 阿弥陀如来坐像
 本像は現在傷みが激しく各部材がばらばらになった状態です。
POLYWORKS/MODELERによる画面上での再構築を試みました。

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