Online Lecture 12

文化財保存修復従事者心得

文化財保存学保存修彫刻復研究室

文化財保護従事者の無知と怠慢は、文化財の破壊に直結します。
以下のことを常に考えて行動してください。

1)温度
 エアコンや暖房器具による温度の急激な変化は、文化財に甚大な影響を与えます。みなさんが扱っているたいせつな仏像や、制作している作品に影響がないか、 常にこころ配りして下さい。
 暖房器具の熱は、表面温度を上げるだけでなくかなり深く浸透する反面、反対側は冷たいままです。その結果、干割れ、割裂、漆層や彩色層の剥落の原因になってしまいます。

2)湿度

 温度が上がれば湿度は急落します。また、すきま風やエアコンの風も直かにあたると表面から急激に水分を奪いますから、風があたらないように充分に防護処置をしてください。
 写真撮影の際の照明も、温度や湿度の急変を招きますから、極力短時間の使用を心がけて下さい。

3)紫外線
 太陽光線や一部蛍光灯が発する紫外線は、漆や顔料、染料に有害です。それらに曝される時間をできるだけ短くするよう配慮してください。特に冬場は、太陽が低い位置を通り、思わぬ場所まで差し込みますから充分に 気をつけて下さい。

4)赤外線
 ストーブは赤外線すなわち熱線を放射しています。遠赤外線はかなり深く浸透し、脆弱な木部に干割れや割裂を招きます。彩色像や漆塗りのものは特に危険です。

5)生物
 寒い時期は生物の活動は低下すると思われがちですが、暖房を入れることで逆にネズミや虫が集まってきます。また黴も一年中気をつけなければなりません。食べ物や飲み物を周りに置かないようして、作業場は常に整理整頓、清浄を心がけて下さい。

6)汚損
 文化財の前では、薬品や体液による汚損に充分配慮しなければなりません。
 唾液の飛散防止には、ハンカチやマスクで口を覆うこと。また文化財に触れる場合、掌や指先の脂分を充分ぬぐってから行うこと。夏場の調査には、汗に充分注意すること。

7)災害

天災/突然の天災にも、被害を最小限にくい止められるよう、ふだんから備えを充分にしておいてください。重いものや倒れやすいものの下には、大切なものをおかないこと。落下の危険性をつねに考えて、整理整頓につとめるように。万一の浸水に対し、大切なものはすこし高い台に保管するなどの心使いをしてください。
火災/火災の大半は人災です。文化財関係者は、喫煙の習慣がないに超したことはありません。暖房器具、照明器具の管理、漏電の発見などを心がけ、不必要な電源は切るように心がけて下さい。消火器の位置や取り扱いも、それぞれで確認をしておくように。
人災/人災として盗難や不注意による紛失・破損もあります。 持ち場を離れるときは、かならず保管庫に返し施錠すること。移動の際には、ひとりでおこなわず、かならず声を掛け合って二人以上で行うこと。
 人災は悪意と怠慢によっておきますから、大切な文化財は君たち各自がしっかり守ってください。

彫刻文化財の修理原則(保存修理・維持修理)

1)現在遺されている造像時のよい姿をこれ以上損傷させないよう保持し、できるだけ永く後世につたえることをこころがけること。当初の部材や当初の彫刻面、当初の彩色や漆箔はもっとも尊重され、傷つけないよう配慮しなければならない。

2) 粗悪な後世の付加物(後補部、補彩など)は、技術的に可能な場合にかぎり、修正または除去することがある。

3)欠損・亡失部分は原則として補修しないが、将来、損傷がさらに拡大したり、像の保安上、また構造的に不安のある場合は、補修・復原することもある。

4)修理部分の仕上げはできるだけひかえ目にまとめ、当初仕上げ部を生かす美しい修理を行うべきである。従って無用な補足や像面の塗り直しなどは行わない。

5) 信仰の対象である場合、修復の程度について所有者の希望を尊重し合意を得る必要がある。

6)修理委員会、外部研究者(監督者)の客観的意見を尊重し参考にすること。

参考;「美術院の伝統技法」西川杏太郎より

【指定文化財の種類】

文化財保護法第二条および文化財保護条例において規定されている文化財。

1) 有形文化財
2) 無形文化財
3) 民俗文化財
4) 記念物
5) 文化的景観
6) 伝統的建造物群

文部科学大臣は、文化財のうち重要なものを指定、認定、選定、登録、選択し、保護のもとにおくことができる。ただし指定およびその解除にあたっては、文部科学大臣はあらかじめ文化審議会に諮問しなければならない。(第153条)

1)有形文化財(建造物、美術工芸品/会が、彫刻、工芸品、書籍、転籍)、古文書その他の有形の文化的所産。考古資料および歴史資料も含まれる。

国指定重要文化財
 国宝/重要文化財のなかから世界文化の見地から価値の高いもので、類いない国民の宝たるもの。
 重要文化財/有形文化財のなかから特に重要と判断されるもの

都道府県指定文化財
市町村指定文化財

【文化財保護に関する法律の変遷】

古器旧物保存方(1871)
古社寺保存法(1898〜1929)
国宝保存法(1929〜1950)
重要美術品(重要美術品等の保存に関する法律)(1933〜1950)
      貴重な美術工芸品の海外流出を食い止めるために制定された認定制度。
文化財保護法(1950〜 )