香川県 願興寺
乾漆造 聖観音菩薩坐像 模刻

白澤 陽治

<研究概要>
 奈良時代に制作された本像を模刻することにより、当時の制作技法を追体験することで、当初の造形感覚や古典技法に関する理解を深めることを目的とした。
 本像は現在、国指定文化財としては、四国で唯一の脱活乾漆像である。香川県木田郡三木町にある鰐河神社の本地仏であったものを、明治2年の神仏分離の際、別当応神寺が廃寺となり、この像を保管していた人と願興寺住職との縁故があり、同寺に移されたという説があるが、伝来は明らかでない。現在は願興寺境内にある収蔵庫に安置されている。
 本研究にあたり、収蔵庫の中で本像を間近で拝観し、制作する機会を与えていただき、充実した模刻制作を行うことができた。模刻を通して熟覧することで、奈良時代の彫刻表現の奥深さを実感し、静かな表現の中にも彫刻的に強い造形が感じられた。また、制作過程を経て、古典技法や用いる素材に対する理解も深めることができ、仏像をみる視点が大きく変化したと実感する。実際に修復している像の熟覧の際にも、着眼点がより明確になり、保存修復に従事するものとして、一つの像を徹底的に模刻することは必要不可欠であると感じた。

戻る