京都府 即成院
木造 観音菩薩跪坐像 模刻

保坂 紗智子

<研究概要>
 本像が制作された平安時代後期と同様の材料・技法で模刻制作することで、当時の造像技法を体得する。また本像は寄木造りの中でもさらに複雑に細分化された木寄せが行われており、それがもたらす利点・欠点を検証していく。
<本像について>
 本像は即成院本堂内陣に安置されている阿弥陀二十五菩薩来迎像の内の1軀である。即成院の前身は、藤原頼道の子息・橘俊綱が建立した伏見寺であり、阿弥陀二十五菩薩来迎像は伏見寺焼失(寛治7年)後に俊綱によって発願された。俊綱は供養を待たずに没したことから、本像の造立はその没年である寛治8年(1094)を余り隔たらない頃と推測される。また制作者については、裕福な文化人であった俊綱発願の造像であることや、優れた出来栄えと造形的特徴などから定朝直系の「院助」、あるいはその周辺仏師によるものとの指摘があるが、定かではない。
<本研究にあたり>
 即成院の皆様のご好意により、夏の2ヶ月間、即成院堂内にて実像を間直に拝見しながら制作させていただくことができた。正面からは見えないのにもかかわらず、足元やその周辺の衣の巻き込み方など丁寧に作られており、それは単調に形式化されたものではなく非常に写実的で、かつ全体のバランスを見て抑揚がつけられており、制作者の観察力と表現力が感じられるものであった。
 可能な限り手作業で制作することで不便なところは多々あったが、そのためにいかに効率よく進められるか工夫するようになり、それがおのずと当初の制作手順を踏襲していったのではないかと思う。模刻制作を通して身に着いた知識・技術を、今後修復に活かしていきたい。

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