東京藝術大学蔵
肥後別当定慶作 木造毘沙門天立像模刻

後藤友里

<研究概要>
 本研究では銘文によって貞応元年(1224年)に慶派の一人である肥後別当定慶が制作したことが判明している本学蔵・毘沙門天立像の模刻制作を行うことで、構造や造形感覚を考察し、鎌倉時代の造仏技法への理解を深めることを目的とする。
<本像について>
 本像の作者である肥後別当定慶は運慶、快慶らよりも後の時代に活躍した仏師である。代表とされる仏像は、京都・鞍馬寺聖観音菩薩立像や京都・大報恩寺六観音像6躯などがあげられ、複雑で装飾的な衣文や髪型など個性の強い作風を残している。さらに非常に写実的であり崇高な表情を持っているこの像は、作者のこだわりと高い精神性が表れている作品である。
<本研究にあたり>
 本研究制作の最中に雪渓寺(高知)湛慶作、願成就院(静岡)運慶作の毘沙門天立像の調査と小山寺(茨城県)毘沙門天立像の修理に参加する機会に恵まれ、本像との比較をすることで共通点や同じ尊格でも異なる作者の個性を見ることができた。また、形を追い求める余り、彫りすぎてしまった箇所がいくつもあるが、彫刻形状の再現を最優先とするために、新たに材を足し、本像の造形を追究し続けることとした。また本像は彩色層が薄く、形に添って丸刀彫りが見られた。本像に習い彫り進めていくが刃物が入り辛い所にまで丸刀彫りが見られ、像の完成にどのような効果があるのか、さらに探求してみたくなった。そして作業の最中、刃物の形によって形が決まっていくことや、研ぎや作業の段取りが彫刻の完成度にも大きく影響していることを痛感でき、大変貴重な勉強が出来たと思う。

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