福井県清雲寺蔵
吉祥天立像並びに善膩師童子立像 模刻

中嶋莉恵

<研究概要>
 本研究は、清雲寺蔵吉祥天立像並びに善膩師童子立像を模刻することにより、本像が造られた鎌倉時代当時の材料・技法の再現を目指し、当時の造像技法を体得するとともに、造形感覚や表現方法についても理解を深めることを目的とする。
<本像について>
 本像は、福井県大飯町大島にある清雲寺所蔵毘沙門天三尊像の脇侍である。鎌倉時代中期頃の中央正統派仏師による作とされ、国指定重要文化財に指定されている。吉祥天立像は60㎝、善膩師童子立像は50㎝満たない小さな像である。両像共に、檜材による割矧ぎ造りで、玉眼を嵌入していて、銅製の装飾をつける。両像は、吉祥天頭部に見られる釘跡、善膩師童子像腹部に見られる釘跡から、現在よりも更に装身具があったと思われ、両像共に現在残っている彩色、截金から見て大変華やかな像であったことが想像できる。小さな像ながらも、両像の個性を写実的に巧みに表現している。伝来や作者など不明点が多く、毘沙門天立像と脇侍の作風が異なることから、しばしば作者や年代が違うのではないかと指摘されることがある。
<本研究にあたり>
 装飾的な衣裳をまとい厳しい表情をした吉祥天像と、簡略化された衣裳にあどけない表情をした善膩師童子像は、お互い異なる趣がある。どちらも骨格や豊かな肉付きは非常に人間味あふれる写実的なものであり、模刻制作を通して、彫刻表現を探求しようとする作者の姿勢を垣間見ることができた。両像を同時に模刻制作することで、人間的な観察力や柔軟な表現力を持って、小さな像にまとめあげることができる作者の優れた力量を感じた。
 夏期休暇を利用して9月の一カ月間、大飯町に滞在し本像を間近でじっくり拝観する機会をいただき、大変貴重な経験をさせていただいた。清雲寺のある大飯町大島は、日本海に面した半島である。岬には、大飯原子力発電所があり、その裏山にはニソの杜といわれる禁足地帯やお寺、神社などの文化財が多数存在する地域である。大飯町に滞在するなかで、現地の方の信仰心の深さに触れ、仏像の在り方について考えさせられる時間を頂いた。

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