道明寺蔵
木造十一面観音菩薩立像模刻

中村恒克

<研究概要>
 平安時代前期の檀像彫刻における代表的な作例である本像を模刻することにより、制作当時の構造及び技法を学び、また他の檀像彫刻と比較検討することによって、作風の変遷について理解を深めることを目的とする。後補または後世に取り除かれたと思われる髻頂の化仏立像及び頭上面、左手腕釧より先、両天衣、葺軸・敷茄子・心棒の想定復元を行う。
<本像について>
 本像は菅原道真の祖先にあたる豪族、土師氏の氏寺として7世紀に建立された道明寺の本尊である。像高は97.6㎝。構造は頂上仏面から足下の蓮肉、さらに右手指先まで木芯を含む榧の一材から彫出した一木造りで、内刳りは施されていない。瞳には黒い石と思われるものを嵌め、頭髪や唇のみ彩色が見られる。地髪上に付けられた化仏立像と頭上面、天冠台から遊離する冠紐、左手腕釧より先、右手第2〜5指の指先、持物、背面に遊離する条帛、瓔珞の一部、両腕から台座上に垂れる天衣、蓮肉後方の一部は後補。蓮肉中央より後方に修理跡がある。蓮肉の彩色は後補と思われる。台座は本体と共木の蓮肉以外すべて後補。本像は直立する姿勢や、腕釧及び胸飾が奈良時代に見られる形状をし、右手や瓔珞まで一木から彫り出す檀像彫刻であることから、制作年代は8世紀末〜9世紀初めにかけてと思われる。制作者は不明。精巧な造形と檀像彫刻中特筆すべき優品として、昭和27年に国宝に指定されている。

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