長野県 興正寺
薬医門出桁彫物「子持ち龍」

小野貴登司

〈研究概要〉
 本研究は、江戸時代後期の彫物大工立川流の建築装飾を模刻することにより、その制作工程を検証し、また建築装飾における造形感覚を学ぶことを目的とする。
〈本作品について〉
立川流は、江戸時代中期から明治まで諏訪地方に拠点を置いた彫物大工の流派の一つである。立川流の代表的な作例としては『諏訪大社下社秋宮』や『静岡浅間神社』など彫物群がある。
 本作品は、長野県興正寺薬医門出桁彫物で、立川流二代・立川和四郎冨昌の作である。欅材一木造りの透かし彫りで、大小2疋の龍に荒波紋状の波をあらわしている。躍動感にあふれ、圧倒的な力強さを表現しており、近世建築装飾の頂点の一つと思われる。
〈本研究にあたり〉
 3Dデータによる解析の結果、龍頭部は、木取りの段階で他より10㎝程度、高くしていることが想定された。これは、龍頭部を前面に出すことにより抑揚をつけ、その迫力をより効果的に表現することを意識した木取りであったためと思われる。また、子龍の顔や尾などの部分は、木取りの時点であらわれた平面上に基準となる頂点を彫り残し、その周りをより下げることで、高低差を生み出している。屋外の高所に設置するための建築装飾ということから、より陰影を付け造形を際立たせるためだと考えられる。

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