山形県 慈恩寺
普賢菩薩騎象像 模刻制作

李品誼

〈研究概要〉
 本研究では、平安時代後期作と思われる本像の模刻制作を通して、構造を解明し、制作当時の技法を学び、造形感覚や表現方法についても理解を深めることを目的とした。また、普賢菩薩像の膝前、両前腕にかかる天衣の部分は後補であり、象の鼻先・下顎・歯・牙先・各爪・尾は亡失しているため、制作年代が近いと思われる作例を参考にしながら、本像の造形に相応しい想定復元を行った。
〈本像について〉
 本像は、もとは慈恩寺釈迦堂に安置されていた阿弥陀(伝釈迦)如来坐像・文殊菩薩騎獅像と一具と思われ、さらにそれぞれに眷属を付属するという大群像の一部である。制作年代や作者などは文献上では特定できないが、作風や造法から平安後期の作と考えられる。昭和62年に重要文化財に指定された。
〈本研究にあたり〉
 平安時代後期は、普賢菩薩が登場する法華経の「女人往生」が注目され、王朝女性の間に信仰が盛んであったことが先行研究で論じられている。また普賢菩薩像は、文殊菩薩像に比べ、ほっそりした繊細な体型や、やや痩せている頬などの表現は女性のようにしなやかな姿態であらわされる。本制作を通して、こうした背景も普賢菩薩像の表現に反映されているのではないかと感じた。また、当時の日本には象がいなかったにも関わらず、経典や絵画などを参考に作られた本像は、合理的な骨格や筋肉の量感と自然な姿勢などがあらわされており、作者の写実的な表現と優れた造形力に感心した。

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