京都府 金剛心院
如来立像 模刻制作

宮木菜月

〈研究概要〉
 本研究では、平安時代前期の作とされる京都府金剛心院如来立像を模刻制作することにより、一木造の造像技法、造形にたいし深い理解を得ることを目的とする。また後補となっている両手足先、亡失した螺髪の想定復元を試みる。
〈本像について〉
 金剛心院は京都府の日本海側に位置する古寺である。本像は丹後地方に伝わる最も古い作例であり、衣が後方に大きく靡いている表現から、風動表現の一例であるとされている。その手法は8世紀前半に唐より伝わり、図像を超え仏像の彫刻表現にも影響を与えたとされているが、現存する作例は多くない。本像は風を受けたその衣に、翻波式衣文や松葉形衣文、渦文などの衣文表現が鮮やかに表されており、当代における風動表現の興盛を物語る一例である。像高95.6㎝。両袖を含めた頭体幹部を木芯を含む榧の一材から彫出する。
〈本研究にあたり〉
 本像は木芯が前方に傾いて抜ける、特異な木取りとなっている。今回の模刻制作における木取りの際には、材の底面を斜めに切り落とすことでその傾きの再現を試みた。実際に制作を進めると、それが本像の前傾姿勢の動勢に合致しており、木取りの段階から像の印象を明確にとらえることがでるため、作り手にとって非常に彫り進めやすい実感を持った。また、材を傾ける事により、後方に靡く裳裾表現により生じる材の余剰を回避することが可能となる。以上のことから、予め意図された木取りだったのではないかと考えるに至った。それは、本像のような檀像の流れを汲む一木造に、より計画された制作工程が存在したことを示唆するものである。
 夏休みの一ヶ月半、お寺のある京都府宮津市で滞在制作を行った。海沿いの民宿とお寺と制作場所とを行き来する日々は、造形に関することばかりでなく、1000年以上の時を経てお像が守り継がれてきた背景に思いを馳せる機会を与えてくれた。

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